マグチグループ株式会社
代表取締役 尾形 哲 様
Interview賛同受入企業インタビューNo.1
代表取締役 尾形 哲 様
今から7〜8年前になりますが、テレビのドキュメンタリー番組でプロ野球選手がドラフト1位で入った球団から、一度も一軍に上がれずに去っていく。そしてスーツを着て鞄を持って就職活動をしている姿を見ました。
そういうアスリートの引退の姿というのは、何か寂しい感じがして、そこまで努力して一生懸命打ち込んできた人間が就職になった途端に自分自身で決められない、自分の思う就職先に行けないんだと思いました。このような姿を目の当たりにして何かアスリートのサポートをすることができないかなと。
当時、東日本大震災の後関東地方から労働力不足がどんどん深まっていき、我々は関西基盤ですけれども、関西もいずれこの波というのは来るだろうなと感じていました。労働力不足と言われているにも関わらず、そういう就職活動をしてなかなか決まらない姿というものにすごいギャップを感じたことが、初めのところです。
そういった問題をいろいろなところで投げかけて話をしていくと、やはりアスリートに関わってきた人、また元アスリートは、非常に共感を持っていただいて、何かお手伝いできるならばみたいな話もたくさんもらいました。
そして1年2年と経っていく中で、元アスリートや共感をいただいた方と話を深めていくうちに、そこには元プロ野球や、元サッカー選手というような方々も関わってくれてきました。
話をしていくうちに、一つの大きな問題は何なのかというのが議論をされ、それは選手時代から、将来のことを考えられずに動いていることに問題があることが見えてきました。やはりアスリートとはいえ選手時代、ファーストキャリアと言われる時代から、セカンドキャリアについては最低限意識をして動くべきであり、セカンドキャリアを知った上で、スポーツに打ち込むということの方がスポーツ界にとっても本人にとっても良い人生になっていくんじゃないかということが議論の末に結果として出てきました。
一流のアスリートは、そのまま関係するスポーツでセカンドキャリアにスムーズに移行できるケースが多いと思います。ところが、その一歩手前の方々、よく世に「2:6:2の法則」って言われますけれども、2割はトップアスリートでセカンドキャリアに悩まず食っていける。ところが6のうちの上の2(トップアスリート)に近いところの人間というのは、必死になって上の「2」になってやろうと頑張った結果、他のことを何も知らずして打ち込んで、引退した途端に、どうしたらいいだろうというような状況に陥るというのが、その議論の中で出てきた話です。
その方々に対して、もう少し世の中でスムーズな仕組みを作れたらいいなと、逆に言うとその「6」の内の「2」の人間が我々企業側にとっても必要な人材であるというふうに思うのです。
(その方々は)協調性もあれば、諦めずに努力する。ということも習慣づいてるし、マナーやモラルもおそらく持ってるだろうし、いろんな意味で、企業にとっても戦力になる人材がそこに埋もれてるんじゃないかなと考えたというのが、その当時の話でした。
では、我々としてはどのような形でサポートできるんだということを考えました。
一つはプロジェクトを組んで、選手と企業を合わせて、就職できるようなステージを作りたいと考えました。
ただ我々間口グループだけでしたら、関西基盤中心に絞られ、選手の選択肢というのは狭いんじゃないかなということから、全国の企業、共感いただける会社を募って、選手の選択肢を広げるということが、選手にとってもベターであり、このプロジェクト本来の目的に繋がっていくんじゃないかということで、今度は企業側の賛同者を募っていくということを勧めました。
一方で選手側への普及にも障壁が高く、一方的に募ったところで、選手というのは我々に対して、何の信頼性もないわけです。そこでプロ野球独立リーグをご紹介いただいて、所属チームの選手が引退するときに当プロジェクトを活用してもらうという話になりました。ところが、チームのフロントも、選手がまだ続けたいとなれば、辞めさせるというわけにはいかない。又、同時に、独立リーグはいろんな地域に広がっていき、受け入れ先が増えたために、選手もやっぱり諦めきれなくなってきたんです。
当プロジェクトの目的というのは、スポーツ競技で生活していくことを諦める選手が、やり切った後、競技を諦める勇気を持って次のステージを自立して進めるような環境作りというのが最大のテーマです。
そのことを当時話をし、全スポーツを対象とした展開にしていくことを決めました。それが2019年です。
そして2020年1月から、事務局にHAAAPの田村さんが熱き思いを持って参入、全スポーツを対象とした新体制としてスタートしました。ところがそこからすぐに新型コロナの影響があって、なかなか思うような活動ができずにいましたが、それでも我々のビジョンに共感をしてくれて、プロジェクトに加盟してくれている企業が現在30社です。登録アスリートは、ファーストキャリアの時代から「いろんな情報を知る」ということが大切です。当プロジェクトの賛同受入企業の求人情報などを閲覧することで、まずどれくらいの収入で、どのような年齢の方に対して、募集をしていますよということを見てもらうことが一番です。
またアスリートも現役でプレーしている中で、なかなか自分がもうやめますということは周りに知られたくない。なので第一段階としてアスリートは、無記名でプロジェクトのLINEに登録ができます。そして、実際に自分が引退するという時に、自分をPRできる環境に置くときに初めて名前を公表して、企業側に見ていただく、というような2ステップ方式で進めています。
賛同受入企業にお願いしていることは、今すぐ(人身売買みたいに)採用できるかという即効性はないと、長いスパンで物事を見ていただけたらということと、このプロジェクトは、アスリートに諦める勇気を与えるということと同時にスポーツをやり切るということをさせてあげたい。その先にある自分の人生は自分で決めるという自立心を養う。これを目的としてプロジェクトがあるので、そこにご賛同いただいて、受入れに繋がれば労働力確保にもなるということをお伝えしています。この考えにご賛同いただける企業が賛同してくれたらいいと思っています。ということを事前に伝えた上で、このプロジェクトは成り立っています。おかげ様で、この(新体制になって)2年間はコロナ禍で苦しい中でもみなさんの頑張りもあって、一つ一つ新しいことができています。
アドバイザーのみなさまにも、いろんなところにお声掛けいただいて、活動もしていただいておりますし、今後加速する土台作りはできてるのかなと思っています。
また、現在プロジェクトリーダーの加賀谷が多くの大学や高校の広報と繋がっております。野球で甲子園に出るようなチームや大学選手権に出るようなところとの繋がりも多くあります。またサポートメンバーの小塚は、もともと関取です。親方も経験、現在は日本相撲協会評議員の1人でもあります。
事務局の三好はもともと小、中、高、大、アマの横綱です。そういった意味ではいろんなスポーツとの関わりがあるメンバーが多くいます。
諦めるというのが一番その選手にとって難しいところだと思うんですけれども、それはやはり引退後にこういう情報がある、こういう世界があるということを教えていただくことでより切替やすくなると思うんです。
順番的に言うと「諦める」の前に「やり切る」があると思うんですね。やりきれる環境作りですね。心配せずにやり切ると、スポーツの結果もよくなると思うし、結果として受け入れてくれる先があるということです。
そのためにも、選手の(就職先の)選択肢を増やしていきたいと考えています。日本全国もっと様々な企業にご賛同いただければ、選手が自分の地元に帰って活躍したいという場合に、地元の企業に就職ができる、そういう意味で全国的に賛同受入企業を網羅していきたいと思っています。
その中で、選手がCDP以外の別の企業を選んだからといって、我々としては全然後悔も何もない、むしろ自分で選んでくれて良かったと思います。自分で選択する土壌として我々があったということが役に立てていることだと思っています。スポーツをしているアスリートというのは、10を必要とするなら、6、7割の働くための素養を持っています。そのアスリートが、働き先がないと言っている姿に違和感を感じ、働ける環境を作ることによって、まずはスポーツをやり切り、その後自分で就職する企業を決め、その企業で働くことによる新たな熱意が生まれやる気も一層高まり、また企業としても労働力不足が少しでも解消できるはずである、貴重な労働力として確保できるはずです。
セカンドキャリアに対しての不安の解消で、スポーツ界も良くしていって、企業としての成長に繋がるような人材育成もできるステージをこのプロジェクトでやりたいというのが想いです。